1.事案の概要
企業様であるご依頼者様は、元従業員Aが退職する際に、元従業員Aとの間で、退職後の競業避止義務を定め、仮に競業避止義務に違反した場合には違約金として300万円を支払う旨の合意をしました。
元従業員Aが退職してしばらく経った頃、ご依頼者様は、取引先の従業員の方から元従業員Aに宛てたメールを受信したのでその内容を確認したところ、元従業員Aがご依頼者様の取引先から業務を受注していたこと,つまり競業避止義務に違反していることが発覚しました。
そのため、ご依頼者様から元従業員Aに対し、事実確認のために電話やメールなどの方法によって何度も連絡をしたものの、一向に元従業員Aから応答はありませんでした。
2.方針
ご依頼者様からご依頼を受け、まずは内容証明郵便を送付することにしました。しかし、元従業員Aは内容証明郵便を受け取ったものの、元従業員Aから連絡は一切ありませんでした。
そのため、話し合いによる解決は難しいと判断したことから、訴訟を提起することにしました。しかし、元従業員Aは第1回期日に出廷しませんでした。そのため、こちらの請求を全面的に認める判決がなされたのですが、元従業員Aによる控訴もなされなかったため、判決が確定しました。
そこで、弁護士会照会を利用して大手金融機関に対し、元従業員A名義の預貯金の口座情報の照会を求めることにしました。
3.結果
照会を求めた大手金融機関のうち、一社に元従業員A名義の預金口座があることと、回答時点の残高が約150万円あることが判明しました。
そのため、すぐに当該預金口座の差押えの申立てを行い、無事に約150万円の差押えに成功しました。
その後、預金を差し押さえられたことを知った元従業員Aから、観念したのか分かりませんが、残額についても支払う旨の連絡があり、数回にかけて無事に遅延損害金も含めて支払を受けることができました。
4.コメント
本ケースのように、確定判決や公正証書といった債務名義があれば、本ケースでも用いた弁護士会照会や改正民事執行法によって新設・改正された制度を用いることによって実効的な財産調査が可能です。また、本ケースでは差押えによって回収できたのは債権の一部でしたが、その場合であっても差押えによって生じた心理的プレッシャーから残額についても任意の支払いを受けられるケースもあります。
債権回収のことでお悩みの方は、是非弁護士にご相談ください。